ニョッキのバターセージソース

 

               古代の薬 サルビア

 イタリアでは、カトリックの宗教上の理由で金曜日に動物肉を断つことから、腹持ちのするじゃがいもを使ったニョッキが木曜に食べられる習慣が今なお続いています。茹でたじゃがいもを温かなうちに潰して粉と練り合わせ、水団状にしたお料理が日本にもあります。「ひっつみ」と言って、お芋の澱粉質がしっとりふっくらと出汁を吸った、口当たりの優しい青森の郷土料理です。イタリアのお芋のすいとんニョッキは、茹で上げた後、濃いめのソースに絡ませるのでパスタの一種として分類されています。今回は、昔ながらのイタリアマンマの手作りニョッキを最もシンプルにサルビアの芳香を効かせたソースで仕上げます。主要材料のじゃがいもは収穫後時間の経ったものを使い、ほっくり茹で上がるタイプの物を選ぶこと水分含有率が少なければ、加える粉の量も抑えられます。Patata rossa(皮の赤い品種)は甘みがあり、ほくほく感も十分でニョッキ向きです。かぼちゃ(Mantovana種)のニョッキも不動の人気がありますが、近頃スーパーでもよく見かけるPatata violaは澱粉質は少なめですが、美しい紫色がそのまま残り栄養価が高くて、変わり種のニョッキとしてお勧めです。いずれの材料も小麦粉を20~30%ほど加えます。

材料:目安4人分

  手作りニョッキ

  • じゃがいも 800g、小麦粉(grano tenero 00) 25g
  • 卵 小1個、ナツメッグを挽いたもの 一振り
  • 塩 小さじ½、 小麦粉 打ち粉用 適宜
  • ニョッキ茹で汁用の大粒の塩(sale grosso) 適宜

  ソース

  • バター 30g、 サルビアの葉 一枝
  • エキストラ・ヴァージン・オリーブ油(以下EVOと表記) 大さじ1

作り方:ニョッキは作り置きができません。冷凍保存のみ可能です。成形をしたら1時間以内に加熱する必要があります。

  1. じゃがいもは大きさにもよりますが、たっぷりの冷水から30~40分ほど茹でます。沸騰したら中火にして高温の中で皮が破裂しないようにします。浮き上がっていれば茹で上がりです。一旦水切りをして、粗熱をとります。
  2. じゃがいもの皮を剥き、手早く潰します。(ピューレ状にするschiaccia patateがあると便利です。)水分を蒸発させるように大きく広げます。大きめのボウルに分量の小麦粉を敷いた上へ潰したまだ温かいじゃがいも、塩、溶いた卵を入れて、手で捏ねます。べたつくようであれば、打ち粉をしえひとまとまりにします。
  3. 2.を等分にして、それぞれ直径2cmの棒状に伸ばします。これを1cmの長さに切って、軽く両手で丸めながら、フォークの背にあてながら人差し指でキュッと押しつぶし、筋目をつけたら乾いた布巾の上に並べていきます。(冷凍保存する場合は、ラップを敷いた器に広げ、半凍りしたら口の閉じれる袋などに移し替えます。)
  4. ソースを準備します。フライパンに潰したニンニクとEVOを敷いて弱火にかけ、ニンニクの香りを油へ移します。サルビアの葉を手でざっくりちぎりそこへ加えます。火を止めバターを加えて溶かしておきます。
  5. ニョッキを茹でます。大鍋にたっぷりの湯水を沸かします。沸騰したら水分に対して塩を1%加えます。
  6. 沸騰湯へニョッキを入れて茹で始めたら、4.のソースをとろ火で温め直し、ニンニクを取り除いておきます。ニョッキは1~2分でゆらゆらと浮き上がってきます。浮き上がったものから順にすくいながら水切りし、ソースへ絡めてきます。お好みで粉チーズを散らしていただきます。

殺菌効果のあるセージ(伊語:Salvia)は、ソーセージに使われたりするハーブです。ラテン語のSalvere(救う)が由来すると言われるように、古代エジプトやギリシャ・ローマ時代には、万病の治療に用いられていた記録が残されています。2品目は、そのサルビアを使って肉の臭み消しをし、柔らかな芳香とうっすらした苦味を白ワインの酸味を合わせ、その美味しさに「口に飛び込んでくる」と名付けられたおなじみのローマ料理です。思いついたらすぐできる簡単な一皿です。

サルティンボッカ ~ Saltimbocca ~

材料:目安4人分

  • 仔牛肉 薄切り4枚(220g)
  • 生ハム(Prosciutto crudo) 4枚(100g)
  • フレッシュ・セージ 1枝
  • 白ワイン 150cc、ニンニク 一片、小麦粉 適宜
  • 黒粒胡椒 少々、EVO 適宜

作り方:

  1. 仔牛肉は、筋切りをして軽く形を整えて、黒粒胡椒をふります。ここへサルビアの葉を貼り付け、生ハムで挟むようにして、バラバラになるのを防ぐため爪楊枝で留めておきます。これに小麦粉を両面つけ、余分な粉をはらいおとします。残ったサルビアの葉は、ソース用にみじん切りします。
  2. フライパンにEVOを大さじ1敷き、潰したニンニクを入れて弱火でじっくり香りが出るまで油を温めます。香りが立ち始めたら、ニンニクは取り出します。強火にし、1.の肉を生ハム側から敷いていきます。フライパンを揺らさず、少し焦げ目がつくまで火を通し、みじん切りのセージを裏面に散らしたらひっくり返し同様に香ばしく焼きます。焦げ目がついたのを確認し白ワインを振り入れます。ここでフライパンを揺らしながら、強火でフランベするようにアルコール分をしっかり飛ばします。肉を器に取り出し、残りのソースを煮詰めて上からかけて完成です。

おまけの一品:寒冷にあたるとよく食べられるラツィオ州名産の野菜、Puntarelle(プンタレッレ)。日本でも栽培が進められている健康野菜ですが、チコリーの一種で、アスパラガスのようにむくむくと育った7-8cmの長さの花茎(トウ)の部分をアンチョビードレッシングで和えていただきます。

材料:

  • Puntarelle  一株、アンチョビーのオイル漬け 2~3本、ニンニク 一片
  • 赤ワインビネガー 大さじ1、EVO 大さじ2、浸水用レモン一切れ

材料:

  1. 冷水とレモン一切れを用意します。Puntarelleの中心の花茎をポキポキと手で折り、バラバラにしてからよく切れる小型ナイフを使って一本ずつ繊維に沿って割くように切っていきます。まずは半分割すると中は空洞ですが、その中側の根元部分から尖頭へ向かって割くように切っては、冷水へ晒していきます。1時間くらいしたらくるくるとカールした状態となり、水切りします。
  2. アンチョビー・ドレッシングは、まな板の上に芽を取ったニンニクとアンチョビを重ねてのせ、フォークの背を使ってよく潰してペースト状近くになったらEVOと良く混ぜ合わせ、ワインビネガーをゆっくり加えながら攪拌します。
  3. 食べる前に1.と2.を和えたら出来上がりです。

          ~ I piatti sono pronti e buona pettito! ~

 

                                                                                          《協力:後藤知美さん》