作るも食べるも賑わいながら

 厚手のコートを羽織る頃、ローマの中心街を歩いていると商店の脇や街路樹の下で、白い煙をもうもうとその香ばしい香りと共に辺りを温かに燻らせている焼き栗屋を見かけます。長い冬の訪れを感じる風物詩でもあります。

イタリアの栗は、日本の栗とちがい水分が少なく粉質で味わいが濃厚です。焼き栗にすると、ホクホクしてでんぷん質の優しい甘みが引き立ちます。暖炉火、炭焼きやオーブン、穴の開いたフライパンなどで焼いていくと渋皮の中の水分が蒸発していって、粉末状になって破裂することがあります。西洋栗のこの性質を利用した栗粉(Farina di castagna、又はmarrone)というものがあります。この粉を使ったお菓子のCastagnaccio,necci toscani,crepesはよく知られていますが、産地では勿論パスタにも使います。ペーストで有名なGenovaでは、トロフィエという捻じったショートパスタ、トスカーナやカンパーニアでは、キターラやタリアテッレなどのロングパスタ。どれも、栗の果皮を燃料に使い、燻しながらローストした粉を使っているので、糖質の密度が上がり甘みを感じられ、塩気のあるソースと絡めるとその味のバランスはより滋味深く、香気に包まれ、深秋から初冬のこの季節だけの味覚を楽しませてくれます。

今回は、この栗の粉を使ってローマでは手に入りにくい手打ちパスタを家庭向きにしたものをご紹介します。

栗の粉のタリアテッレ、ポルチーニ茸とヘーゼルナッツのソース

Tagliatelle di castagne ai porcini e nocciole

材料:目安とて4~5人分

  • 生地用 小麦粉(00タイプ) 180g / 栗粉 100g / 卵 2
  • ソース用 ポルチーニ茸 1パック(400~500g)、ヘーゼルナッツ粉末 大さじ2、にんにくのみじん切り 1片、あればタイムの葉(timo) 一つまみ、シブレット(erba cippolina) 10本ほど、エキストラ・ヴァージン・オリーヴ油(以下EVOと表記) 適宜、粗塩(sale grosso) 適宜、塩・胡椒 適宜

作り方:

  1. パスタを作ります。作業台の上またはボウルの中に栗の粉と小麦粉をふるい入れ、真ん中に窪みをつけ、溶き卵を流し込みます。始めは指先で周りの粉を少しずつ合わせていって、粉と卵液を徐々にひとまとめにしていきます。粉気が多くまとまりにくい場合、常温の水をごく少量ずつ加えてもよいでしょう。まとまったら、軽くこねて少し滑らかにします。ボウルに入れたままラップなどをして30分~1時間ほど休ませます。
  2. 作業台の上に取り出し、打ち粉(分量以外の小麦粉)をし、長い綿棒を使って約1.5mmまでのします。パスタマシーンを使う場合は、目盛り下から3番目までの薄さにのします。
  3. 幅0.8mmほどに包丁で麺切りします。長すぎると扱いづらくなるので箸の長さを目安にするといいでしょう。打ち粉をしながら半掴みずつ巣篭もりのようにくるりと巻いて、平ザルの上などにおいておきます。生麺ができたら、パスタ用のお湯を大鍋に準備します。
  4. 次にソースを準備します。ポルチーニ茸の根元の硬い部分を包丁で削ぎ取り、土がなければ水で濡らしたキッチンペーパーで軽く拭きます。土が多い時は、硬い刷毛で汚れをこすり取ります。笠と軸を縦に厚めにスライスします。
  5. フライパンに多めのEVOとにんにくのみじん切りを入れ温めて、にんにくから香りが出てきたら、タイムとポルチーニ茸を加え、炒めます。塩と胡椒で味付けしながら、しんなりし過ぎないようにフレッシュ感を少し残した状態で火を止めます。
  6. パスタ用の湯が沸騰したら、サーレグロッソを加え、パスタを投入します。栗粉は甘みがあるので、塩気をしっかり茹で汁につけておきます。3分ほどで浮き上がってくるので、味を見て大丈夫ならもう1~2分茹でて湯切りし過ぎないように、パスタを取り出し、ポルチーニ茸と一緒に合わせます。よくかき混ぜて、とろみをつけます。ヘーゼルナッツの粉とシブレットのみじん切りも加え、一緒に和えたら出来上がりです。

栗の粉を使ったドルチェをここで取り上げたいところですが、それはまたの機会に。

 

次は、ナポリ以南の地方でクリスマスに無くてはならないお菓子です。コロンとした生地は「かりんとう」のように揚げています。それをたっぷりの蜂蜜で絡め、クリスマス・リースの形に固められます。華やかな「雷おこし」といたところでしょうか。お味の方は、素朴ですが賑やかなおしゃべりは止まり、手が止まらなくなる!?作るのも食べるのも、何かと「賑やか」な要素の魅力のあるドルチェです。

ナポリ風ストゥルッフォリ ~ Struffoli napoletani

材料:1台分

  • 生地用 小麦粉00タイプまたはDolce(おかし)用 400g、卵 3、砂糖 40g、甘いリキュール(ラム、コアントロー、リモンチェッロ、ストレーガなどお好みで) 大さじ2、レモンの皮のすりおろし 1個分、バター 大さじ1、塩 一つまみ
  • たっぷりの揚げ油 植物オイル(ピーナッツオイルまたはひまわりオイル) 40g
  • 蜂蜜(MiilefioriやLimoneなどの癖のないもの) 250g
  • 砂糖 大さじ1
  • フルーツピール 適宜
  • トッピングシュガー・アラザン 適宜

作り方:

  1. ストゥルッフォリの生地を作ります。パスタの生地同様、作業台か大きめのボウルに小麦粉をふるい入れ、生地の材料全ても入れてひとまとめにして手ごねをします。軽くこねて滑らかになったら、こちらもパスタ生地同様1時間ほど寝かせます。
  2. 生地を取り出し、優しく一捏ねし、丸い生地を平たくし、スケッパーなどを使って始めに8等分、さらに16等分に分割し、それらを細長い繩状に、切り口が直径1cm弱になるくらい長く伸ばしていきます。
  3. その間、揚げ油を準備します。180度くらいになるまで温めます。
  4. 生地をニョッケッティ(小さいニョッキ)のように細かく5mm強の幅にカットしていきます。この時、くっつかないように分量外の打ち粉をします。油の温度を確認するために、生地を落としてみて、すぐに上に上がってくるようであれば、カットしたものを2~3等分(16等分のうち)の量ずつ油の中へそうっと落としていきます。2~3分ほどで色づき始めますが、投入したら時々かき混ぜることで、全体が均一に色づきます。濃いめのきつね色になったら、キッチンペーパーを敷いたバットへ取り出します。残りの生地もカットしては、1回に始めの量と同じくらいずつすべての生地を揚げます。
  5. 次にフッ素加工など施した大きめのフライパンで蜂蜜を温め、砂糖も加えます。大きな泡が出てシロップのように煮詰まってきたら、若干色づくのを待ち、火を止めフルーツピールと4.のストゥルッフォリをすべて入れ、木べらで全体に絡まるようにしっかり混ぜます。
  6. 大きなお皿にリング状に盛り付けます。上から、カラーシュガーやアラザンなど塗して飾ります。保存は、冷蔵庫で3~5日くらい可能です。

 では、おまけのもう一品。今回は、もう一皿プリモ・ピアットです。

ショートパスタの中でも大きく、その形状から詰め物をしてオーブンで焼き上げるのが美味しく食べる方法です。季節のロマネスク・カリフラワーと魚介をサフラン入りベシャメルソースで詰め物をし、グラタンのように焼き上げます。尖ったパスタの先から、モミの木のように緑のカリフラワーがつんつん顔を出し、ツリーを連想させるお皿です。

カリフラワーの詰め物のコンキリオーニ、グラタン仕立て

Conchiglioni gratinati con cavolofiore romanesco

材料:目安として4~6人分

  • Conchiglioni 200g
  • ロマネスク・カリフラワー ⅓株(約200g)
  • 魚介類(*スモークサーモンやハム類などお好みのもの) 50g
  • ちりめんキャベツ 100g
  • 玉葱 小1個、辛口白ワイン 100cc
  • EVO、塩、胡椒 適宜
  • ベシャメルソース 牛乳300cc、バター30g、小麦粉30g、サフラン雌しべ 一つまみまたは粉末1袋、塩・胡椒 適宜)
  • お好みで粉チーズまたはパン粉 大さじ2

作り方:

  1. パスタ鍋にたっぷりの湯を沸かします。魚介を加える際には、ここで下ごしらえをします。切って塩をしておきます。
  2. カリフラワーを洗って、コンキリオーニの中に詰めやすい大きさに花蕾を切り揃えます。
  3. 1.の湯が沸騰したら、塩小さじ1ほど加えて2.のカリフラワーを4~5分少し硬めに茹でザルに取り出します。その湯に塩をさらに加え(3%の塩分)、コンキリオーニを表示時間より2分ほど短く硬めに茹でます。
  4. 詰め物のベースの玉葱をみじん切りにし、小鍋で少量のEVOを軽く炒め、魚介に火を通します。白ワインも加えて中火で半量まで煮詰めます。ここへ、茹でたカリフラワーを加えて、ざっくり混ぜて器へ取り出しておきます。(スモークサーモンやハム類ならこの段階で刻んだものを加えます。)
  5. ベシャメルソースを準備します。4.で使った小鍋にバターを入れて弱火で溶かします。ふるった小麦粉を一気に加えて、木べらで回しながら炒め、ダマにならぬよう牛乳は少しずつ加えていきます。柔らかくなったら、サフランも加えます。弱火でじっくりトロミがつくまでかき混ぜて、塩・胡椒で味を整えます。このベシャメルソースに4.の調理した具材を加えて、混ぜたものが詰め物になります。
  6. ちりめんキャベツを千切りにし、塩・EVOをまぶし、グラタン皿に敷き詰めます。茹でたコンキリオーニの中に詰め物の5.をスプーンで詰めては、キャベツの上に並べていきます。お好みで粉チーズかパン粉をまぶし、EVOを一筋垂らします。
  7. 食べる直前に、200度のオーヴンに入れ、10~15分こんがり色付くまで焼きます。

 

     I Piatti sono pronti,buon appetito! Buon natale e Felice anno nuovo!

 

                                                                                     

                                                                                      《協力:後藤 知美さん》