ツナとトロペア産赤紫玉葱のンドゥイヤ風味

~Ciambella di tonno e cipolla rossa di tropea alla 'nduja~

陸の孤島で発展したカラブリア料理。

西はティレニア海、東はイオニア海に面し、盛夏には摂氏35度を超える日が多いイタリア半島のつま先部分にあたるカラブリア州。平地が少なく山に覆われていることから古い時代には、栽培できる穀物類や野菜の種類に限りがありました。そんな中、中南米原産の植物は気候条件や土壌が比較的似ていたからか、栽培が容易にできました。中でも香辛料となる唐辛子は単調に感じられる食材の味に変化をもたらせ、アクセントになるためさらには保存料としても大変重要な役割をすることとなり、陸の孤島ならではの独特な食文化が育っていきました。

カラブリア料理のシンボルともなっている『’Nduja(ンドゥイヤ)』は、唐辛子たっぷりのスプレッド状のサラミの一種でTropeaのすぐ隣のSpilinga村が発祥の地です。その製法は、ナポレオン勢力下の時代にフランスから伝わったのだそうです。貧しい農民たちがやっと手に入れられる豚肉の部位で、ほるもの(=ホルモン)を利用して作られたのが始まりです。今では、日本へも輸出されるほどのカラブリアの名産品です。ローマでもスーパーなどの精肉売り場小さなパック状になったものが、店頭に並んでいるのも見かけられるようになりました。同じくカラブリア産といえば、良く知られている『Tropeaの赤紫玉葱』があります。EU規定のIGP(特定保護指定区域で生産される表示)とされていますが、こちらの栽培の歴史は2千年以上と古く美しい白唖の海岸地帯、ティレニア海の真珠と言われるTropeaの周辺のみで夏が終わる頃に種蒔きが始まり、冬の長い成長期間を経て普通の玉葱(初夏に収穫)より少し早い時期に収穫されます。果物のような甘みと歯ざわりの良さが生食むき言われる調理法ですが、ビタミン・ミネラル他健康への効用が知られカラブリア以外の州でもますます注目されている野菜で、幅広い料理に使われてきています。あろうことにTropeaの町のジェラート屋さんでは、'Nduja味やCipolla rossa di Tropea味という奇妙なジェラートを出しているところもあります。この二つの食材は一緒に炒めてパスタと和えたり、ライスコロッケの味付けに使ったりされますが、組み合わせることで即カラブリア料理になってしまうほど個性溢れるコンビネーションです。今回は、ピッツァ生地を使ってこの二つの素材の風味を閉じ込めるようにロール状に巻き込み、リング型に焼き上げた家庭料理ならではの一品をご紹介します。ピリッとした刺激が初夏らしく、市販の生地を使えばお手軽にできるので店頭で見つけたら是非お試しください。

材料:4人分が目安

  • ピッツァ生地 市販のもの約400g
  • ツナ缶 150g(油切りしたもの)
  • トロペアの赤紫玉葱 150g(小2個)
  • 'nduja 大さじ1~2
  • Timo(タイム)やAneto(ディル)などの香草 適宜
  • エキストラ・ヴァージン・オリーブ油(EVO) 適宜
  • 必要に応じて塩 適宜
  • 小麦粉 打ち粉用

作り方:

  1. 赤紫玉葱は薄切りにし、EVOを少量垂らしたフライパンでさっと火を通します。少し透き通るくらいで器に取り出し冷ましておきます。
  2. ピッツァ生地は、麺棒を使って横25cmX縦18cmくらいの長方形に伸ばします。巻き始めと巻き終わりは少し空けて、詰め物となる1.の玉葱とツナを広げるように置いていき、真ん中くらいの高さに'ndujaをちぎりながら一直線におきます。手前からロール状にくるくると巻きつけ、巻き終わりのところを生地と生地とをつまむようにして閉じます。オーブンシートを敷いたオーブン皿へ閉じ目を下にしつつ、丸いリング状にして先と先をつなぎます。
  3. オーブンに発酵機能がついていれば、2.を30分ほど予備発酵させます。なければ乾燥しないようにラップを被せ室温で休ませます。
  4. オーブンを予熱で200度に温めた後3.の表面にEVOを刷毛などでたっぷりめに塗って約30分ほど焼きます。素材から水分がでるので、表面に焦げ目がつくまでしっかり火を通します。
  5. 焼き上がったら網皿などに乗せ、少し冷ましてから切り分けます。

次は旬のなすをコロッケのように調理したもの。茹でたり、グリルで焼きなすなどにしてから、潰し丸めてパン粉をまぶして揚げたり、時にオーブン焼きにされたりしますが、カラブリアをはじめ南イタリアやギリシャなどではよく知られたなす団子。カラブリアでは粉チーズにペコリーノのみ使われますが、風味に癖があるのでここでは大部分をパルミジャーノやグラナ・パダーノチーズに置き換えたレシピを紹介します。旬のなすの甘みを味わう配合としていますが、ニンニクのすりおろしを少量と黒胡椒を加えるとお酒の肴にぴったりです。。。

   なすのミニコロッケ

 ~Polpette di melanzane~

材料:4人分が目安

  • なす 500g(大1個)
  • パルミジャーノ・レッジャーノまたはグラナ・パダーノ 40g
  • ペコリーノチーズ 15g
  • パンの白い部分 70g
  • 卵 1個
  • パン粉 60g(コロッケ生地用)+45-50g(衣用)
  • 塩 適宜
  • ピーナッツ油など(揚げ油用) 適宜

作り方:

  1. なすは、ヘタをとり半分の長さに切ります。まな板の上に切り口を下にし安定させて、皮をそぐようにすると簡単です。(コロッケ用にはこの皮を使用しませんが、小麦粉をまぶし一緒に揚げると茄子紺が彩りを与えてくれます。)コロッケ用のなすは3~4cm角にざっくりと切り、薄い塩水に浸け灰汁抜きを軽くします。鍋に水切りしたなすを入れて5mm程の高さの水も加え、蓋をしたら中火にかけます。沸騰したら弱火にし、8~10分間透き通ってくるまで時々上下返しながら火を通したら、ザルに開けて冷まします。
  2. 1.のなすの水分を十分に切りよく潰します。パンの白い部分はできるだけ細かく5mm角に切り刻み、なすと一緒にボウルに入れたらよく混ぜ、卵をよく溶いて半量弱つなぎに加えて混ぜ、パン粉とお好みの粉チーズも量を調整しながら加え、ひとまとめになるようであれば、直径2cm程の団子状に丸めます。(フードプロッセッサーなら、初めにパンの白い部分を10秒かけた後取り出し、なすを10秒かけてパンの白い部分を戻し残りの材料を合わせて5~10秒間パルスしただけで、コロッケ生地完了です。)
  3. 衣を付けます。溶き卵の残りの半量へ小さじ1の水を加え、ここへ2.の団子をくぐらせ最後にパン粉をつけておきます。180度に熱した揚げ油でからりと揚げて出来上がりです。

                       I piatti sono pronti e buon appetito!!

 

                                                                                         《協力:後藤知美さん》