干し鱈のマンテカート ヴェネツィア風

BACCALA' MANTECATO ALLA VENEZIANA

 

Stoccafisso(=stock fish)は、流通システムの未発達だった時代の貴重な保存食の一つでありました。日本でも室町時代より北海道で漁獲後、寒風にさらすことで安定化と軽量化を図り、沿岸部から遠く離れた地域へも運ばれ、大変重宝された水産物でした。このカチカチに乾燥させた棒鱈を京の都では、1週間近くもかけ、水を替えながら戻し、名産のえび芋と濃い出汁でじっくり煮た「芋棒」という名物料理が生まれました。高級料亭で出される逸品です。時は同じく、イタリアでも15世紀あたりノルウェーから輸入されるようになり、このstoccafissoを使った郷土料理が各地で広がっていきます。よく似た料理で南仏の「Bradade de morue」以上に有名なヴェネツィア料理の「Baccala' mantecato」は、

この干しダラの旨味を最大限に引き出した傑作料理であることはえ間違いないでしょう。鱈は、寒流系の深海魚ですから、氷点下でも固まらずサラサラした成分のオメガ3脂肪酸が豊富に含まれ、近年は薬品等の原料にもされるほどです。オリーヴ油のオメガ9と合わせてmantecato(=こねるの意味)したこの一品、脂肪酸のバランスも完璧と言えるのではないでしょうか。ヴェネツィア風に香ばしく炙ったアツアツのポレンタにのせて、真冬の一大イベントのクリスマスや新年を祝福する食卓に極上のスプマンテと一緒にいかがですか。

材料:2人分から(ワンプレート用に)、4人分(前菜用に)が目安

  • 塩抜きした塩蔵タラ又は戻したダラ 400g
  • 水  0.5ℓ~0.75ℓ
  • 牛乳 100ml
  • ニンニク 2片
  • エキストラ・ヴァージン・オリーヴ油(以下EVOと表記)  80ml
  • イタリアンパセリ 3枝ほど
  • 塩・胡椒  適宜
  • あればフレッシュな月桂樹(ローリエの葉) 1枚

 ポレンタ(トウモロコシの粗挽き粉を粥状に炊いたもの)

  • Polenta istantanea(加熱時間が短縮できるインスタントの粉使用)
  • 水 600ml
  • 塩 小さじ½強
  • EVO 適宜

〔下準備〕

塩蔵タラ(ローマではbacala' sotto saleの名で売られています。)は、1~2晩たっぷりの水に漬けて、時々水を替えながら低温の下、塩抜きします。

干しダラ(stoccafisso)は、元から7~8割の重量分は乾いていますので、ゆっくりと数日かけて戻すことになります。*すでに戻したものが容易に見つかるので、そちらを使うことをお勧めします。

 

〔作り方〕

  1. 塩気がきつくなく適度に残ったタラは、鱗が気になれば取り除き、ざっくり握り拳ほどの大きさにカットして鍋へ入れ、水をひたひたになるまで注ぎます。皮を剥いたニンニクと牛乳(苦手な方は代わりにレモン汁)を投入し中火にかけます。沸騰し始めると白い泡と灰汁が浮いてくるので、すくって取り除きます。火を弱め10分~15分程度タラの身が柔らかくなるまで煮ていきます。
  2. 1、の工程の間、インスタントのポレンタ粉を煮ます。大鍋に分量の水を沸騰するまで沸かし、泡立て器で水流を作りながら中心に向かって、ポレンタ粉を砂時計のようにサラサラと落としながら混ぜていき、ダマができないように混ぜたら木べらに変えて、鍋底が焦げ付かないように常時回しながら3分程、中弱火で煮ます。少量を短時間で煮上げるため、塩は最後に加えます。これをバットなどへ平らに広げて冷まして固めます。
  3. 1、の鍋を火から下し、タラの身を取り出し冷まします。祖熱が取れるころ、骨は皮もきれいに取り除きます。茹で汁は、身をほぐしながらクリーム状にする際に硬さを調整するのに使うため捨てずにとっておきます。(残りの皮やだし汁は、ここでは使いませんがスープなどへ利用できます。)
  4. 冷ましたタラの身をフードプロセッサーへ入れてすり身状にします。先ずは少量(大匙2~3)の茹で汁でしっとりさせながら羽を回します。ここへEVOを注ぎながら更に攪拌していきます。スプーンですくい落してみて、しばらくしてからぼたっと落ちるくらいが固さの目安です。必要であれば塩・胡椒で味を引き締めます。イタリアンパセリのみじん切りを加えたらマンテカートの出来上がりです。マシーンを使わずにフォークの背を使って潰しながらしっかり攪拌すれば、手作業でも十分にムースのようなふんわり感と滑らかさは出ます。
  5. 2で固まったポレンタをお好みの大きさにカットしたり、型抜きしてEVOを刷毛などでうっすら塗り、熱々のグリルパンやフライパンで炙るように焼きます。お皿へ盛り付け、4のマンテカートをのせてパセリの葉などで飾ったら出来上がりです。写真は、サラダ赤茎ほうれん草、ルッコラ、ザクロ、チアシードを添えてます。)

((マンテカートが余ったら))茹でてマッシュしたジャガイモと合わせて小麦粉・卵・パン粉の衣を付けて揚げ油でカラリと揚げますと「Crochetta di baccala'(タラのコロッケ)」の出来上がり。こちらもほっくり冬ならではの一品です。

                  Ecco,il piatto e' pronto e buon appetito!

                     Vi auguro buon natale e felice anno nuovo 2016!!!